2014年度通訳案内士試験<合格体験記>(4)
●[中国語/東京](メルマガ読者)
(1)受験の動機
私は1999年度に中国語で、2003年度に朝鮮語で合格し、2007年からは「通訳案内士試験道場」の看板を掲げて主に中韓の通訳案内士を養成してきました。
このようなバックグラウンドですので受験動機はかなり変わっており、「受験者としての感覚を身につけること」でした。
8年間案内士試験の指導をしてきましたが、久しぶりに「受験者」になることで、よりよいアドバイスが皆さんにできるのではないかと思ったからです。
(2)第1次試験対策
私が中国語や韓国語で指導しているものとほぼ同じやり方を踏襲しました。
それは
(1)「日本的事象英文説明300選」の他、日本文化に関する英語による本を十数冊読む。(ちなみに類書のうち、この試験にはやはり「300選」が最も適切だと思いました。)
(2) TIME誌の、特に日本やアジア方面の記事を読み、和文に訳す。
(3) これらの中で気になる表現をエクセルに打ち込み、合計約五千語の「単語表現帳」を作成する。
(4)自作の「単語表現帳」を暗記する。
(5)一次試験一週間前に過去問題五年分を解く。
というものでした。
「300選」など、日本文化に関する本は、自分も中国語や韓国語で教材を作ってきましたのでそれほど難なく頭に入りました。
しかしTIME誌は、単語のシンボルがつかめず、訳せないもの、そして日本ネタでさえ、そもそも意味が分からないものも多々ありました。
当道場の対策講座では中国語でも韓国語でも二千から三千もの文章を和訳させ、そこで出てきた四千から五千もの単語や表現を覚えていただきます。
私自身はとりあえず語学職人の端くれですので、これぐらいは当然のことですが、そうでない方々にプロレベルの量と内容をやっていただいていたことに、改めて気づきました。そして自分が人様に課してきたことと同じレベル、同じ量をやってみて、初めて本当に受験者の苦労と勉学の楽しさが分かりました。
試験本番の日、私は時計を忘れてしまいました。
はずかしい話ですが、その前日、当道場の生徒さんに「注意事項」として時計を持っていくように言っておきながらこのざまです。
そこで最寄駅から会場の和洋女子大に行く途中の時計屋で、ストップウォッチを買いました。
会場について驚いたのは、地理、歴史、一般常識が免除されている受験者をまとめたからか知りませんが、200人ほどいた会場で43歳の私より若い人がわずか数人。
中国語や韓国語では私ぐらいの年が多いので、英語では私の親の世代が過半数とは驚きました。試験では覚えた単語表現がかなり出たこともあり、多少の手ごたえは感じました。
(3)第2次試験対策
私は大学時代、日本の大学で欧米人に囲まれて過ごし、それなりに英語を使っていましたが、その後約二十年英語で発言することはほとんどありませんでした。
そこで毎月紘道館という日本文化を学びつつ英語でディベートする集まりに参加しました。
http://紘道館.com/
ここでは下町と山の手、菊と刀、武士道、国学と蘭学、儒教など、日本の精神文化についてたくさん学びました。
試験レベルを超えて深く日本を追求したい方にはお勧めです。
そして直前1週間前からの対策としては、日本語の文章を20秒間録音して、それを聞き、書き取ってから英訳し、その英訳をさらに録音して自分でチェックします。
これは普段から自分が指導しているやり方ですが、自分がこれほどできないのかということに愕然としました。と同時に、当道場で受講しておられるみなさんのレベルの高さに驚きました。
さらに30秒でスピーチプランを立てて2分で話す練習を、一次受験の日に購入したストップウォッチ片手に行いました。これは何とかできました。
スピーチテーマの書かれた紙を見て、5秒以内でテーマを決め、すぐに構成を決める練習も、指導しているだけあってなんとかなります。これは言語に関係なく共通のことですから。
面接の前日、当道場で韓国語+英語のダブル受験をする方と一緒に、本番の練習をしました。そこには生徒と指導者という関係ではなく、ともに受験を突破しようという仲間という立場がとても面白かったです。
二次面接本番では、ある教室からスピーチの内容が筒抜けでした。よく聞こうとすると聞こえるのですが、語学職人の端くれがこれではあさましいので、あえて聞こうとはしませんでした。そうこうするうちに私の順番になりました。
まず「漢字のくずし字が平仮名になった」とかいう内容の日本語を読まれ、それを英語にするときのこと。私は中国語が出そうになり、それを喉元でおさえるのに必死でした。前日にそれとほぼ同じ内容を中国語で指導していたからです。呼吸が乱れ、落ち着きがなくなりました。
ああ、負けたと思いながら、最後まで「英訳」というよりも英語で大体の内容を伝えました。他言語学習者の方は、受験言語だけで勝負する癖をぜひともつけてください。
次のスピーチテーマは普段から5秒以内で決めるように指導してきました。悩む時間を構成に使わないともったいないからです。
私は歴史系が好きなので、どんな問題でも歴史系で行くと決めていましたから、迷わず「黒船」を選びました。
これは何とかやりこなし、質疑応答にも何とか答えられました。
これらの「受験体験」を通して、実際の受験者の気持ちがよく分かりました。
(4) ハローのメルマガ、教材などで特に役に立ったこと
有益な情報の多いメルマガには助けられました。さらに「300選」は非常にコンパクトにまとめられており、お勧めです。
また、ホームページの資料室コーナーは、2000年から今までの過去問題や受験者数などがほぼすべてのっており、著作権のため「墨塗り教科書」的になっている他のサイトのものより明らかに有益です。
(5)今後の抱負
中韓がほとんどですが、これまで160名の通訳案内士を養成してきました。そして痛感するのは、プロとして「使える」のはそのうち2割程度だということです。
自分がそのレベルに達しているかというと、残念ながら「使えない」8割です。とはいえ、今後は人様から「英中韓通訳案内士」扱いされるというこの現実が重くのしかかります。今回の合格は「仮免許」であり、「本免許」ではないことを自覚し、なおかつ「英中韓通訳案内士」であることから逃げずに「本免許」=プロレベルを目指して精進します。
そして大先輩である植山先生が業界の改善に粉骨砕身しておられるのに鑑み、私もささやかながらお手伝いできればと考えております。
植山先生、ありがとうございました。
●[イタリア語/東京](メルマガ読者)
(1)受験の動機
自分のイタリア語のレベルを試してみたかったことと、かねてより日本文化を外国のお客様に紹介するガイドの仕事に興味があったことです。
(2)第1次試験対策
●日本地理 ハロー:マラソンセミナー /昭文社「上撰の旅」 /二宮書店「現代地図帳」
・ハローの教材であるマラソンセミナーをダウンロードさせていただき、YouTubeの講義とあわせて活用させていただきました。
・観光地についての知識が乏しかったので、昭文社の「上撰の旅」という観光本を全巻読み、各都道府県ごとに自分で旅行プランを練りながら実際に旅行する気持ちで勉強しました。
・主な山河や地名、湾の名前などなど、高校時代の地図帳を寝る前に眺めていました。実際に自分で旅行する気分で学習できたのがよかったです。どの交通手段をつかうかとか、どこの旅館に泊まろうか、など地理の知識だけではなく、一般常識の分野でも使えそうな知識が身につきました。
●日本歴史
センター試験の成績を利用して免除でした。
●一般常識 浜島書店「最新図説 政経」
・第1次邦文試験対策<特訓1800題>を繰り返し利用させていただきました。
・高校時代の政経の教科書を開き、過去問でよく問われた部分を勉強しました。一般常識は一番対策がしにくくてやっかいでした。2014年は音楽イベントやジャパンエキスポなど、私の得意な分野が多く出題されていてラッキーでした。
●イタリア語
・イタリア語の問題はイタリアの新聞記事から出題されます。新聞記事には記者の方の独特の表現やいいまわしが多用され、よく分からない部分が多く、イタリア語のレベルを計るのに適切な題材がどうかは疑問でした。
・記事には政治・経済用語がたくさん登場するので、それを知っていればお得です。インターネットでもイタリアの新聞記事(Stampalibera.it やLeggo.itなど)が読めるので、それで勉強するといいと思いました。
・基本的なイタリア語の構文など、NHKラジオのイタリア語講座が質がよくてオススメです。
(3)第2次試験対策 三修社「イタリア人が日本人によく聞く100の質問」
・三修社の「イタリア人が日本人によく聞く100の質問」を図書館で借りました(なんとCD付!)。とにかく時間がなかったのでこの1冊に集中し、自分の中で実際の試験をイメージしながら一人でしゃべる練習。
・まさか合格しているとは思わず、試験対策をはじめたのは、合格通知を受け取ってからでした。とにかく日本文化についての知識が乏しかったので不安でした。
・アルプスの少女ハイジのアニメーション(イタリア語吹き替え版)を視聴し、シャドゥイング。発音して美しいなめらかなイタリア語の練習にとっても便利です。(YouTubeで見れます)
(4)ハローの教材で特に役に立ったこと!
・マラソンセミナーは本当にありがたかったです。YouTubeの講義もとても面白く、頭にするする入っていきました。
・2次試験の前に公開していただいた「口述試験対策特別セミナー」や「試験直前のアドバイス」の動画。試験当日の心構えや、実際の試験会場の雰囲気、聞き耳作戦(笑)など、知っているといないとでは大違いの情報で、当日は植山先生のお顔を思い浮かべて程よい緊張感の中、試験に臨めました。
・何といってもハローのメルマガ!勉強意欲の刺激にもなりますし、他の受験者の方々のコメントを見て、一人じゃないんだという大きな励みになりました。
(5)今後の抱負
イタリア語をもっと上達させ、日本文化についても勉強して、素敵なガイドになりたいです!
私はイタリア人の何でも笑い飛ばす明るさとタフさが大好きなので、笑顔で明るく「面白いね」といわれるようなガイドになるのが夢です。イタリア語の学習にあたっては教材は少なく、個人での勉強には限界があるかもしれませんが、私の勉強方法が他の方のお役に立てれば幸いです。ちなみに2014年度のイタリア語の口述試験の試験官のお二人はシックなスーツを着こなされており、始終温かい雰囲気でした。
イタリア人試験官の方は、私の間違いにも「それはこういうことですか?」などと助け舟のような質問をしてくださり、笑顔で対応してくださいました。私も緊張しながらも常に笑顔で受け答えしたのがよかったのかもしれません。今年受験される方は頑張ってくださいね!
最後に、植山先生本当にありがとうございました!!